瀬川君のかはりには彼（あ）の甥（をひ）を使役（つか）つて頂くとして、手の明いたところへは必ず僕が適当な人物を周旋しますよ。相手の玉や囲いの近くへ簡単には取られないように配置した自分の小駒。今日とても矢張自分等の時代で有ると言ひたいが、実は何時（いつ）の間にか世の中が変遷（うつりかは）つて来た。応接室には校長と郡視学とが相対（さしむかひ）に成つて、町会議員の来るのを待受けて居た。斯ういふ談話（はなし）をして居るところへ、小使が戸を開けて入つて来た。 それは丑松のことに就いて、集つて相談したい、といふ打合せが有つたからで。自分はもう旧派の教育者と言はれる一人で、丑松や銀之助なぞとはずつと時代が違つて居る。
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